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居酒屋:あの日~これから

『居酒屋』一覧

店の上階にある住居部分から出火したのは 6月23日。

長い付き合いだったママが焼死。

若い頃、一緒に楽しい時を過ごした昔の仕事仲間から一報が入ったのが 26日の昼。

その後、ママの通夜が行われる斎場の情報を入手できたのは同日の夕方近くになってから。

通夜がその日の夜だったため札幌に行く手段がなく、取り急ぎ弔電の手配だけを。

翌 27日の夜、ママの夫でもある居酒屋のマスターから涙ながらの電話。

・・・。

マスターは弔電のお礼に電話してきてくれたのですが・・・。

私が電話に出ると、
「ママが死んじゃったぁ・・・」
と、泣きじゃくる声が聞こえてきました。

マスターはママを亡くしたことを悔やみ、自分を責めます。

昨年の 10月に会った時は店に出ていたママですが、年末から年始にかけて急激に体調が悪化したとのことでした。

大腸がんの手術をした影響でリンパ浮腫となって足が 2倍くらいになるまでむくみ、歩行に支障を来し始めたのと同時に痴ほうを発症してしまったのだとか。

それが進行性だったらしく、6月に入ってからは寝たきりとなってしまい、25日からひとまず病院に入院して受け入れてくれる施設をさがすことになっていた矢先の 23日に火事が発生してしまったのだそうです。

朝、いつものようにママを入浴させて食事を済ませ、マスターは外出しました。

その外出中に火が出たのですが、その原因は床下で発生した漏電の可能性が高いとのことです。

マスターは、
「あの時に外出しなければ・・・」
「一緒にいれば助けてやれたのに・・・」
と自分を責め、声も途切れ途切れにむせび泣いています。

私には慰めの言葉も見つかりません。

しかし最後には、あの場所でもう一度店をやりたい、ママのためにも店を再建すると言っていました。

自分には何もできませんが、可能であれば想い出がつながることを心から願っています。

そして、その日が来ることを心待ちにしたいと思っています。

マスターは、必ず店を再開してくれることでしょう。

再開に続く

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居酒屋:50代半ばから現在

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母が一人暮らしをあきらめ、私と妻の暮らすこの町にやってきたのは2016年9月10日のこと。

帰省のついでに札幌に一泊し、居酒屋に顔を出すというのがパターンでしたが、帰省の必要がなくなったため札幌で泊まる理由もなくなってしまいました。

しかし年に一度の事とは言え、せっかく付き合いが続いているのですから母ごときのために止めるのもどうかと思い、暑くもなく寒くもない 10月の妻の検診の際に一緒に札幌に行き、店で飲み食いして一泊するという新たなパターンを構築した私達夫婦です 

昨年も 10月の検診の際には一緒に札幌に行き、楽しいひと時を過ごしました 

しかし、それがママとの付き合いの最後の日になってしまうなんて。

・・・ 

行きたくても店はもうありません。

会いたくてもママはもういません。

30年以上も続いてきた思い出が、突然途切れてしまいました 

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居酒屋:50代前半

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久しぶりに会ったママもマスターも変わりなく、一気に昔に戻ったような気がしましたが、実は数年前にママの体に大腸がんが見つかって手術をしたと知らされました 

妻が子宮体がんの手術を受ける直前のことでしたので、ママに心配ないと言ってもらってずいぶんと勇気づけられたものです。

妻の手術、化学療法も終わり、年に数回の検診になった後も、私の実家への通り道だったこともあって帰省の際には札幌で一泊する行程を取り入れ、年に一度は店に顔を出すようにしていました 

再び通い始めて 6年目の 2014年2月25日、いつものように札幌の夜を楽しもうと店に行くとママの姿がありません。

マスターの話では、前月の 1月にママがくも膜下出血で倒れたとのことです 

本当に危ないところだったにも関わらず、急いで病院に連れて行ったため一命をとりとめ、後遺症も残らなかったのは奇跡的なことだったのですが、それ以降は体力も気力も衰て疲れやすくなってしまったので、あまり店には出たがらないとのことでした。

それでも私と妻が店に行くと、フラフラしながらも顔を見せてくれたのは嬉しい思い出となっています 

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ドタバタ劇

灼熱地獄の中でお過ごしの方には誠に申し訳ございませんが、北海道は朝晩とも涼しく時に肌寒さすら覚える気温となっております。

そんな朝の空気の中を散歩して帰宅すると、家の中が多少は暑いと感じるんですけど 

ある日の朝、妻は
「暑い暑い」
と言いながらアチラコチラの窓を開け放ち、裸足になって朝食の支度を始めたものの、しばらくすると
「足が冷たくなってきた」
と言ってすべての窓を閉め、ソックスを履いていましたが、また少しすると
「暑い」
と言いながらソックスを脱ぎ捨てておりまして 

どうしてこうも極端なんでしょ 

寒いと感じたらすべての窓を閉めるのではなく、何箇所か閉めてみるとか、足が冷たいのならソックスだけ履いてみるなどの調整をしたらどうかと。

私はと言えば、それほど暑さ寒さに反応するほうではないので、妻が繰り広げるドタバタ劇を愉快に拝見しておる次第でございますです、はい 

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居酒屋:40代半ば

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約10年ぶりに店に行こうと決めた日、私と妻は互いに約束しました。

たとえ店が潰れて他の店に変わっていようと悲しまない、店があったとして、たとえママとマスターの二人がそろっていなくても悲しまないと 

少しずつ店のあった場所に近づくにつれ、心臓がドキドキしたのを今でも忘れません。

少し離れた場所からでも赤ちょうちんが出ているのが見え、店名も変わっていないと分かりました。

そして店の前でしゃがみ込み、鉢植えの花を手入れしている姿は間違いなくママです 

すぐ近くに立ち止まり、
「久しぶり」
と、かけた声に反応し、こちらを見上げるママの目は、訝しげなものから喜びの表情に変わり、私の手をグイグイと引きながら店に入って
「マスター  マスター
と大きな声で叫びました。

店には年に一度しか行けませんでしたが、その日から再び楽しい時間が動き始めたのでございす。

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警察官と少年と

ある日の朝、散歩をしていると交番の前に座り込む少年と、しゃがみ込んで話を聞いている警察官の姿がありました。

少し距離があったので何を話しているのかは聞こえてきません。

交番の前で転んでしまったのでしょうか 

それとも誰かにイジメられて学校に行くのが嫌だとゴネているのでしょうか 

はたまた深い悩みを抱え、人生相談でもしていたのでしょうか 

私と妻はそのまま散歩を続けたので何があったのかは謎のままです 

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居酒屋:30代半ばから40代半ば

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ママとは 30年以上の付き合いになりますが、実のところ 10年の空白がありまして。

楽しい日々に終わりを告げたのは、私が転勤になったのが原因です 

務めていた会社の本社がある大阪への転勤命令が出てしまったんですよね 

最初の数年は帰省のたびに札幌を経由していたのですが、そのうちに実家のあった町の近くの空港を利用するようになり、その帰省もなかなかしなくなったので、30代半ばから40代の頃は一度も店に顔を出していません。

しかし、このブログにも書いたように妻の兄の大病があったため、10数年の大阪生活に見切りをつけて北海道に帰ってくることになりました。

そして発覚した妻の大病 

その病気の手術、治療に選んだのが札幌の病院でした。

そして再び、居酒屋通いが復活することとなります 

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手ぐすね

物凄く久しぶり、6月14日以来、一カ月ぶりに母に会ってきました。

6月の後半は妻が風邪をひいていたので行けず、その後は天候不順で雨続き、そんな悪天候の中を無理をしてまで行くまでもなかろうと、ズルズルと先延ばしにしていたら今日になってしまったんですよね 

生まれたばかりの赤ちゃんであれば、一カ月も会わなければ成長も著しいでしょうけど、85歳を過ぎた婆さんなんぞは一カ月ごときで何の変化もあるはずもなく 

それでも母は妻が来たら洋服の糸のほつれを直してもらおうとか、あれを頼もうとか、手ぐすねを引いて待ち構えていたようでして。

妻がチクチクと裁縫をする間、私といえば同じことを繰り返す母の話を左耳からダイレクトに右耳へと通過させつつ、スマホのゲームなんかしながら適当に相槌を打ったりしていたのでした 

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居酒屋:30代半ば 2

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火事になってしまった店の一番奥には小さな個室がありました。

そこは 6人くらいが使う程度の広さだったと思いますが、そこに最低でも飲み仲間の 8人、さらに女子社員も加わって 10人以上が詰め込まれ、酸欠になりそうになりながら飲み食いすることもしばしばで 

部屋の奥に座ろうものならトイレに立つのも一苦労、人の背中をまたぐようにして出なければならないんですよ 

それほど当時は忙しい店で、店内はいつも酔客でいっぱいでした。

ある日、予約なしに店に行ったところ、満席だったので帰ろうとするとママが二階を使えと言います 

二階はマスターとママが暮らす住居なのですが、その部屋に案内されて生活感漂う居間のテーブルで飲み食いしたんですよね。

今回の火事は、その居間の床下で発生した漏電が発火源だと聞いています 

あの楽しかった光景と、火災現場となってしまった部屋が同じ場所だとは、どうしても想像することができません 

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居酒屋:30代半ば

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ママとマスターが開いた店には毎週のように通っていましたが、たまには仕事が忙しくて何週間か行けないこともありまして。

そんな時、どうして来ないのかとママから会社に電話がかかってきたりしたものです 

時にはマスターから
「いいカニが手に入ったんだ」
と電話があり、それならばと店に顔を出すとテーブルに並べられたのはサワガニの唐揚げで
「これのどこがカニだっ
と言い争いになったりしました。

まだ試作段階の料理を味見させられたり、暑い夏の夜などは店のメニューにない素麺なども酒の〆に食べさせてくれたのですが、それがきっちり勘定に入っていたことが発覚して大喧嘩したこともあります 

それでもまた週末になると仕事も何もかも忘れて楽しい酒を飲む日々が続いたのは、やはりママとマスターの人柄なのでしょう。

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