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点滴の針

夫が書いていた怖い思いのもう一つは、点滴の針を刺した時のことだった。

抗がん剤の点滴の針は看護師さんではなく、先生に刺してもらわなければいけない。

その日は担当の先生方が出張や手術でほとんど不在、看護師さんが頼んで連れてきたのは隣のチームの若い女医さんだった。

私の腕を見て、針を刺せそうな血管を探していた。

そしてアルコール綿で、手首ギリギリの辺りを拭き始めた。

(えっ?そこ?)

そう思った瞬間、看護師さんが「そこ手首ですよ。無理じゃないですか?邪魔だし、曲げられないじゃないですか。」と言ってくれた。

でも先生は返事もしないで針を刺した 滝汗

しかし、うまく刺さっていなかったらしく、「別の場所に変えますね~。」と軽い調子で言って針を抜いた。

また血管を探し始めたので、自分から「こことか?ここは?」と手首よりも上あたりを指差して言ってたら、「じゃ、ここで。」と針を刺して、今度は成功した。

先生はそのまま病室を去っていこうとしたので、一応は「ありがとうございました。」とお礼を言った。

そして顔なじみの看護師さんと、「いや~、びっくりしたね。」「もう手首に刺されて、どうしようかと思ったよ。」「こっちの言うこと聞かないしさ~。」「あそこは無いよね~。」

その看護師さんはとってもいい人で、私にとっては白衣の天使のような印象だったが、先生が針を刺そうとしているのを、にらむように見ていた 。

優しい看護師さんに、あんな表情をさせてしまう、あの先生は本当に怖い 真っ青

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