約10年ぶりに店に行こうと決めた日、私と妻は互いに約束しました。
たとえ店が潰れて他の店に変わっていようと悲しまない、店があったとして、たとえママとマスターの二人がそろっていなくても悲しまないと
少しずつ店のあった場所に近づくにつれ、心臓がドキドキしたのを今でも忘れません。
少し離れた場所からでも赤ちょうちんが出ているのが見え、店名も変わっていないと分かりました。
そして店の前でしゃがみ込み、鉢植えの花を手入れしている姿は間違いなくママです
すぐ近くに立ち止まり、
「久しぶり」
と、かけた声に反応し、こちらを見上げるママの目は、訝しげなものから喜びの表情に変わり、私の手をグイグイと引きながら店に入って
「マスター マスター 」
と大きな声で叫びました。
店には年に一度しか行けませんでしたが、その日から再び楽しい時間が動き始めたのでございす。